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チームマネジメント チーム力を引き出す5つのポイント

部門長や部署長が、成果が上がる部門や部署を築いていくために活かせる、実践的なチームマネジメントのポイントを解説します!すぐに使えるポイントに絞って、根拠とともに解説しますので、チームマネジメント力向上にお役立てください!

チームマネジメントでリーダーの誰もが抱える課題

「もっと一体感のあるチームにしたい」
「一人ひとりが主体的、積極的に行動するチームにしたい」
「変化を拒まず、チャレンジするチームにしたい」
「メンバーの力をもっと発揮させたい」

多くのリーダーは、このような思いを持つのではないでしょうか。中には上記のようなチームとは程遠いと感じ、自分自身のマネジメント力に自信を無くしてしまう人もいますが、こうした課題意識はリーダーなら誰もが持っているものです。

私自身も㈱日本経営でマネジメントをする立場としてこうした思いを持っています。もっと良いチームを作りたい、社内の各部門・部署がもっといいチームになってもらいたいといつも思っています。

そのために、リーダーとしてより良いチームマネジメントをしていきたいと考えるわけですが、そもそも、どうして一体感やメンバーの主体性、積極性などが必要なのでしょうか。

それは、チームとして目標を達成したり、成果を実現したりするためには、チームとしての一体感やまとまり、メンバー一人ひとりの積極的行動が必要だと思っているからでしょう。まさにその通りなのです。

チームマネジメントの目的とは?

チームマネジメントは雰囲気のいいチームを作ったり、問題の起きないチームを作ったり、居心地のよい職場を作ったりするためのものではありません。

チームマネジメントの目的は、成果を実現するチームを作ることです。

しかし、現在はVUCAの時代とも言われ、先の見通しが立てにくく、変化も急激な時代です。コロナ禍はまさにVUCAそのものとも言えるでしょう。こうした中では、そう簡単にチームとして成果を上げ、目標を達成することはできません。では、どのようなチームであれば、今のように先の見通しが立てにくく、急激な変化が次々にやってくる中でも成果を上げられるのでしょうか。

それは、メンバーがチームの課題を自分事として捉え、一人ひとりが主体的行動するチームです。

言われてするのではなくて、自分から行動する。誰かのせいにするのではなくて、自分ができることを実行する。指示を待つのではなくて、それぞれのアイデアを出し合う。こうしたことができるチームでしょう。これは、チームマネジメントにおいて古くて新しい課題ですが、今の時代にはますます重要度が高まっています。

こうしたチームを作るためには、まずはリーダーのマネジメントスタイルを変えなければなりません。

指示命令型のマネジメントから引き出し型のマネジメントへ

指示命令型のマネジメントが必要な場面はありますが、指示命令型のマネジメントばかりだと、リーダーに対するメンバーの依存度が高まることが分かっています。

多くのリーダーは、部下に「もっと自分から動いてほしい」とか「何でも聞きに来ないで自分で考えてほしい」と考えるでしょうが、指示命令型のマネジメントをしているのであれば、自分のマネジメントが部下の主体性を奪い、依存度を高めるてしまっているということに注意が必要です。実は、部下の主体性を望んでいるはずの上司が、知らず知らずに受け身の部下を育ててしまっているということがあり得るのです。

指示命令型のマネジメント引き出し型のマネジメント
リーダーが頑張るみんなで頑張る
リーダが正解を示す共に考える
リーダーに依存するメンバーが自律する

なんでも指示をするのではなく、メンバーの意見や考えを求め、引き出すマネジメントが重要です。簡単な例で言えば、「どうしたらいいですか?」と聞かれたら、「どうしたらいいと思うのか?」と問い返すようなコミュニケーションです。

指示命令型のマネジメントが一切不要だということではありません。ただ、的確な指示と徹底した実行管理がリーダーシップだと考えるのも問題があります。これからは、引き出し型のマネジメントを中心に持ってくることが重要です。

引き出し型のマネジメントと聞くと、生ぬるいとか、甘いと感じる人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。リーダーシップとはスタイルではなく、影響力です。その影響力の発揮のために、引き出し型のマネジメントが有効だということです。そして、それを実践するためには、まずリーダーが持っている、場合によってはメンバーがリーダーに期待している”前提”を変える必要があります。

変えるべきリーダーの前提

「リーダーは答えを知っている」→「リーダーも分からないことがあると認める」

そもそも先の見通しが立てにくく、過去の経験が通用しにくい時代です。リーダーだって分からないことだらけです。まずはそれを認めましょう。そして、メンバーの意見を求めることです。メンバーは自分にもできることがあると感じてこそ、自ら意見を出すようになります。

「リーダーが解決策を考えなければならない」→「全員でより良い策を考案する」

指示命令型のリーダーは、自分が正解を示さなければならない、具体的な指示を出さなければならないと背負いすぎてしまいます。しかし、一人ではできないことを実現するためにチームがあります。リーダーが自分の考えを示すことは大事ですが、それは必ずしも指示とは限りません。メンバーの力を引き出して、自分の考え以上のより良いアイデアを出すというスタンスが大事です。

「価値観を一致させなければならない」→「多様な価値観が多様なアイデアを生む」

企業理念やミッションベースではまとまりがあるべきですが、一つひとつの事柄に対する見方や考え方は多様であってもいいはずです。価値観が同質化してしまうとアイデアも同質化します。多様な価値観があればこそ、より良いアイデアが生まれるという考えを持ち、多様性を歓迎するスタンスが大事です。

「失敗は許されない」→「小さな失敗を改善しながら向上していく」

VUCAの時代には、トライ&エラーが重要です。変化が激しいわけですから、絶対に失敗しない方法を考えているうちに、状況は変わってしまい、完璧主義すぎるとチャンスを逃してしまいます。まずは行動することが大事。むしろ、致命的な失敗をしないようにしながら行動を促すマネジメントが求められます。

あなたのチームは、メンバーが力を発揮しきっていますか?

引き出し型のチームマネジメントとは、メンバーが持つ力を引き出し切るマネジメントです。その実践のために、ぜひこのような考え方をぜひ取り入れてみてください。

チームマネジメント5つのポイント

1.目的の共有に力を注ぐ

チームをまとめるために最も重要なことは、常にメンバーに目的を意識させることです。どんなことであっても、とにかく目的を意識させることが重要です。

例えば、コピーひとつにしても「この資料をコピーしておくように」と指示をするのか、「この資料は重要なプレゼンの資料です。お客様にお渡しできるようにコピーしてください。」と指示をするのかでもまったく違います。大事なプレゼンでお客様にお渡しする資料だという、その資料の用途、目的が分かれば、指示を受けた人もできる限り綺麗にコピーをとるようにするでしょう。つまり、そこに”思考”が働きます。

私たちは簡単に手段の目的化に陥ってしまいます。手段の目的化がチームマネジメントにおいてとても危険なのは、思考省略になり、主体的な行動や積極的な行動を阻害してしまうことです。

例えば、以下の3つのうち、「目的」「目標」「手段」はどれでしょうか?

毎日3回歯を磨く一生自分の歯で食べ続ける今年は虫歯ゼロ

一生自分の歯で食べ続けるために(目的)、今年は虫歯ゼロにする(目標)、そのために毎日3回歯を磨く(手段)ということになります。

しかし、現場では容易に「毎日3回歯を磨くこと」が目的化してしまうのです。毎日3回歯を磨いていたのに3ヶ月たったら虫歯ができたとします。この場合、手段が悪かったわけですから、歯磨きの仕方や回数を変えたり、歯磨き以外の方法を取り入れるなど、手段の見直しが必要です。ところが、毎日3回歯を磨くことが目的化してしまうと、成果が出ていないのに、そのやり方を続けてしまうのです。

そこで、リーダーは常に目的を意識させ続けることが大事です。目的は固定、手段は可変というのがメンバーに成果を意識させるチームマネジメントの最重要ポイントです。

普段から「〇〇〇のために」という枕詞が口癖になるくらい目的の共有に力を注ぎ、あらゆることについてメンバーに目的を意識させましょう。

2.メンバーに相談を投げかける

一人ひとりの主体性を発揮させるには、本人が「私は必要とされている」と実感することが重要です。これを承認欲求と言います。

褒めることも承認欲求を満たす一つの手段ではありますが、上司と部下の関係、リーダーとメンバーの関係で考えると、最も効果的なのは相談することです。相談することは、お互いに対等であり、あなたを必要としているというメッセージを伝えることにもなるのです。
「こうしようと思っているのだけど、あなたはどう思う?」
「この件についてはあなたの方が詳しいので、アドバイスをくれませんか?」

相談されれば人は意気に感じるというもの。これは必要とされている実感があるからです。活発なチームは、メンバーどうしがよく相談し合っています。リーダーのメンバーとのコミュニケーションの要は、「相談」です。まずはリーダーがメンバーに相談を積極的にするところから始めて、チーム内で活発に相談がなされるようなチームを作っていきましょう。

3.Iメッセージを活用する

Iメッセージとは「私は嬉しい」「私は感激した」のように、主語がI(私)になるメッセージです。コーチングスキルの一つですが、それほど難しいものではありません。

一般的に褒めるというとYouメッセージのことが多いでしょう。「あなたはよく頑張った」「あなたは大したものだ」といったことです。

Youメッセージよりも、Iメッセージのほうが相手の心に響きやすく、印象に残りやすいとされています。Youメッセージがいけないということではないので、Iメッセージを意識して加えていくといいでしょう。

Iメッセージは、部下の自信につながります。なぜなら、「褒められた」ではなく「喜んでもらえた」など、相手の変化に焦点が当たるからです。

感謝を述べるにしても「ありがとう」だけ伝えるのか、「ありがとう、(私は)すごく助かったよ」と伝えるかだけでも、印象が違います。ぜひIメッセージをあなたのコミュニケーションスキルに加えてください。

4.プロセスを重視したマネジメントを実践する

仕事において結果は絶対に大事です。ただ、結果さえ出ればいい、結果が出なければ意味がないといった極端な考え方は結果至上主義と言われ、失敗を隠す風土やチャレンジを恐れる風土につながるなど、弊害があります。

プロセス重視、つまり、メンバーが「私たちのチームは、結果だけでなくプロセスをとても大切にしている」と感じられるようなチームマネジメントが重要です。メンバーがそう感じることで、まず良い結果を出すためのプロセスをよく考えるようになります。そして、仮に失敗したとしても、プロセスを見直して再チャレンジすればいいという受け止め方ができるようになります。

プロセス重視のチームは、ミーティングで自主的な発言が起きたり、メンバー同士のコミュニケーションが向上したり、仕事に対する取り組み姿勢が強化されるといったことが検証できています。

リーダーのチームマネジメントの具体的な実践としては、次のようなことです。
・「良いプロセスが良い結果を生む」とか「失敗するのは失敗するやり方だから」のように、プロセスが大事だというメッセージを共通認識として伝え続ける
・結果がよかったとしても、プロセスを振り返る習慣をチーム内に植え付ける(結果オーライにしない)
・結果が悪ければ、結果そのものを叱責するのではなく、プロセスを徹底的に見直させる

結果と同等か、それ以上にプロセスを重視するチームは、成果を出し続けられるチームになります。

5.外部からのフィードバックを求める

うまくいかなかったら人のせいや環境や景気のせいにしたり、隣の芝生が青く見えて不満を抱えたりするのは、結局思考が内向きになっているからです。

自分たちの仕事がどのように役立っているのか、どのように必要とされているのか、自分たちの仕事は十分なのかといったことに意識を向かせるには、メンバーの目を外に向けさせる必要があります。

外部からのフィードバックは、メンバーの目を外に向けさせるチームマネジメントとしてとても効果的です。外部からのフィードバックの結果がよければ自信につながるだけでなく、仕事のやりがいにもつながりますし、チームのいちんとしての誇りにもつながります。これらはメンバーの積極的な行動を引き出します。
リーダーのチームマネジメントの具体的な実践としては、次のようなことです。
・ミーティングや日頃のコミュニケーションを通じて、社会の変化や顧客からの視点を伝え続ける。
・顧客アンケートやヒアリングを実施する。
・顧客が自社の商品やサービスを利用している場面を見に行く。
・他部署からの評価やフィードバックを受ける。
・家族等の職場見学会を実施する。

外向き思考のチームになれば、メンバーの主体性が高まるばかりではなく、いわゆる「同じ方向のベクトルを共有したチーム」になることが期待できます。

この解説の根拠

このコラムでは、成果をあげるチームに導くチームマネジメントについて、ポイントを絞って解説しましたが、この解説は㈱日本経営が体系化したチームマネジメントの理論に基づいています。その内容を最後に少しだけ紹介します。

チームパフォーマンスを形成する8つの主体的行動

㈱日本経営では学術分野におけるProactive Behaviorという概念とこれまでのコンサルティング実績をもとに研究を重ね、メンバーの8つの主体的行動を定義しています。メンバーがこれらの主体的行動を発揮しているほど、チームとしての成果が上がりやすいということです。

<8つの主体的行動>

自己向上の領域チーム向上の領域
顧客貢献行動チーム力活用行動
最善行動チーム運営向上行動
プロセス改善行動メンバー支援行動
クリエイティブ行動発信行動

チームマネジメントのポイントは心理要因にあり!

さらに、これらの行動を促すことが検証できている心理要因として、以下の9つの心理要因を定義しています。

<心理要因>

チーム貢献の自信チャレンジ精神チームへの愛着
メンバー信頼心理的安全性顧客重視
プロセス重視仕事のやりがい目標共有

チームマネジメントとは、まさにこの心理要因が向上するようにマネジメントするということがポイントなのですが、このコラムではそのうちのいくつかの重要ポイントに絞って解説しました。

チームマネジメントとは、まさにこの心理要因が向上するようにマネジメントするということがポイントですが、このコラムではそのうちのいくつかの重要ポイントに絞って解説しました。

これらのことについてより詳しく知りたい方は、こちらのコラムも参考にしてみてください。

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【参考】
チームの成果につながる8つの主体的行動
主体的行動に影響を与える9つの心理要因(前編)
主体的行動に影響を与える9つの心理要因(後編)

また、㈱日本経営では、チームの主体的行動の発揮度合いとそれらに影響を与える心理要因の状態を手軽に計測できるアンケートツールNaviLightを提供しています。15名まで無料体験もできるので、ご自身のチームの状態が気になる方は、ぜひお試しください。

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株式会社日本経営
取締役 人事コンサルタント 橋本竜也

1999年に入社後、一貫して企業の人事制度構築、組織風土改革に携わる。理論・経験だけでなく、科学的検証に基づいたES調査、チーム診断の必要性を強く認識し、チーム診断ツールNaviLightをリリース。その研究過程や実施データに基づいた知見も踏まえたコンサルティングを提供している。


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