パルスサーベイでリモートマネジメント
パルスサーベイとは、簡易的な調査を短期間に繰り返し実施する調査手法で、従業員調査の一種です。
リモートワークが急速に進んだ今、従業員との関係性構築・エンゲージメント・パフォーマンス向上に課題を感じる企業が増加、そこにDXの躍進、IT技術の進化が加わることで、これまでよりも容易かつ比較的安価に調査を実施することが可能になったことで注目を浴びるようになりました。
ソフトバンク株式会社や株式会社サイバーエージェント等の導入事例も紹介されるようになった一方、2021年人事白書によれば、社内のノウハウ不足、効果に対する疑念からまだ導入に慎重になっている企業が多いのも事実です。
今回は、そんなパルスサーベイを上手に活用するためのポイントをご紹介します。
●「もう、年1回の調査では従業員をフォローできない」パルスサーベイ最大のメリット
● 「これ、何に使われるんですか?」パルスサーベイ最大の難点
●パルスサーベイ実施に向けての検討事項
①まずは実施目的を定める
②実施頻度を決める
③設問内容・設問数
④活用方法・公開範囲を決める
「もう、年1回の調査では従業員をフォローできない」パルスサーベイ最大のメリット
従来の従業員調査は1年~2年に1回実施するのが一般的です。
弊社の従業員調査サービスはこれまで26万人以上の方(2016~2020年)にご利用いただいていますが、1年~2年に1回の調査を推奨する一方で、1回実施したら5年以上実施していない企業も一定数いらっしゃいます。
調査の目的にもよりますが、これでは、現状分析を実施しただけで、取組みの効果・検証ができておらず所謂「やりっぱなし」状態、当然効果も限定的です。また、年1回の従業員調査によって従業員を適宜フォローしていこうとすることには無理があるのは、皆さんも実感があるのではないでしょうか。
転職がキャリアップの一つとして認識されつつある現代においては、退職を意識し始めてから決断を下すまでのスピードは、従来と比にならない程早まっている実感があります。また「退職代行業者」が話題になる等、その決断に上司や同僚が介在しないケースも増えています。
パルスサーベイによって、いかにスピディーかつ適切なタイミングで従業員フォローに入れるかは人事部のこれからの課題といっても過言ではないでしょう。
「これ、何に使われるんですか?」パルスサーベイ最大の難点
課題の早期発見、早期介入の実現が最大のメリットとなる一方で、当然難しさもあります。
例えば、パルスサーベイは匿名ではなく、個人が特定できる状態で測定するものが多いですが、自分の回答を上司や人事部がチェックしていると知った上で、どこまで本音の回答が引き出せるかは未知数です。
また、頻繁に測定しているのにも関わらず、結果は一切公開されない、結果に応じたサポートもない(自分が低い点数をあえて付けたとして、何らアプローチもない)となれば、会社に対するエンゲージメントはかえって下がってしまう要因にもなりかねません。
つまり、パルスサーベイを上手く使うためには、結果の活用イメージを経営幹部・人事部・従業員がしっかりと共通して抱いていることが重要になります。
パルスサーベイ実施に向けての検討事項
それでは、最後はそんな重要性は認識されつつも、難しさもあるパルスサーベイの実施に向けて検討すべき視点をみていきましょう。
①まずは実施目的を定める
何事も目的が明確に定まっていないと失敗することが多くなります。「コミュニケーション活性化」「離職防止」「部下マネジメント支援」等、自社においてどのような経営課題を解決するために実施をするのかを明確にしましょう。
②実施頻度を決める
パルスサーベイは、頻繁に実施することが手法自体の特徴でもあります。2021年の調査では1か月に1回実施している企業が最も多いですが「毎日」「1週間に1回」「1か月に1回」など自社の負担になり過ぎない、フォローが可能な頻度を見極めることが重要です。
③設問内容・設問数
調査は外注して実施することも多いですが、自社オリジナルツールを作成する際は、設問の設定が一番の難点でしょう。よくある失敗例としては
「質問内容が分かりにくい・似たような設問が多い」
これは、英訳した質問を活用している場合に、ただ翻訳をしただけでは、どうしても日本には馴染みのない表現になってしまうことが多くあり、回答者にとって分かりにくいアンケートになってしまっている例です。
「設問の妥当性に科学的根拠がない」
これは、たとえ外注したとしても、その妥当性が担保されていないケースがあるので注意が必要です。学術的根拠がある設問なのか、相関関係だけでなく、因果関係が統計上担保されているか、一貫性が担保された設問設計か等に注意する必要があります。また、設問数に関しては、調査では10問、11問以上で実施している企業が半数を占めており、あまり無理をして「5問以下にする」といったことは必要ないでしょう。
④活用方法・公開範囲を決める
結果の公開範囲は活用方法によって決まり、活用方法は、実施目的によって決まります。自社の実施目的にあわせた活用方法を検討しましょう。
ただし、一部の幹部・上司だけが結果をチェックするというのは、あまりお勧めしません。マネジメントでは、こういった情報格差を設けることによって、主体性の欠如、チーム全体行動への負の影響などが確認されており、かえって上司側のマネジメント難易度を上げる原因となりかねないためです。
情報は全員に公開しつつ、人事部として結果の一部を離職アラートとして早期介入の指針にしている企業もあります。実施目的を軸にしつつ、マネジメント全体を俯瞰した検討が必要でしょう。