チーム診断の注意点と診断ポイント
アンケートによるチーム診断の方法
トピック
1.外してはならないチーム診断の2つのポイント
2.チームの何を診断すべきか
3.チームパフォーマンスとは何か?
4.チームパフォーマンスを診断する方法
5.チームパフォーマンスを向上させるポイント
1.外してはならないチーム診断の2つのポイント
チームの状態はそのチームのリーダー、メンバー、さらには組織のトップにとっても非常に関心が高いものです。かつてはチーム状態の診断をしようとすると大変な手間と時間がかかりましたが、ICTの進歩により、比較的簡単にチーム診断ができるツールも増えてきました。
しかしながら、チーム診断の切り口は様々です。メンバーのモチベーションや満足度などを測るもの、ストレス状態を測るもの、メンバー間の関係性を測るもの、組織の制度や仕組みに対する納得度を測るもの、チームに対する忠誠心を測るもの。どれも目的に即していれば有用ではありますが、チーム診断をする際に外してはいけない2つのことをぜひ押さえていただきたいと思います。
1.リーダーとメンバーが手を打てる内容であること
これは極めて重要なことです。チーム診断の結果は誰のものか。結論的にはそのチームのリーダーとメンバーのものでしょう。その診断結果を見て、そのチームのリーダーやメンバーが自分たちで改善や向上に取り組める診断内容でなければ、意味がありません。
例えば、チーム診断といいながら、賃金に対する納得度や福利厚生、施設設備の充実度などについて質問しているケースがあります。これらはいわゆるチームの単位ではどうにも解決のしようがありません。会社・組織単位で考えなければなりません。
自分たちではどうにもならない内容でそのチームを診断したらどうなるでしょうか。結果を他人事としてみたり、ただの不満のあぶり出しになってしまいかねません。チーム診断の目的は、チームの向上にあるはずです。そうであれば、リーダーやメンバーが取り組むことで改善・向上できる内容を診断すべきなのです。
2.メンバーにオープンにできる内容であること
リーダーやメンバーが改善・向上に取り組むわけですから、当然、診断結果はリーダーを含めたメンバー全員にすべて見せられる内容であるべきでしょう。チーム診断の多くは、メンバーのアンケートやパフォーマンスの評価等で実施されます。本人たちは診断されていることが分かっているわけなので、その結果が開示されなかったり、されていても一部だけであったりすれば、不信感が高まることにもつながります。
よく「この結果を本人たちに返してもいいのだろうか」といったことを人事や上層部が悩んでいるケースがありますが、そのように悩むようなチーム診断なら、そもそも実施しないほうがよいのです。チーム診断を実施する際には、メンバーに内容をオープンにする前提でチーム診断ツールの選定やアンケートの設計をしてください。
2.チームの何を診断すべきか
目的によって様々ではありますが、まずは、「なぜチームが組まれているのか」ということから考えるとヒントが見えてきます。チームを組む目的は、複数のメンバーが協働することにより、個人では成しえない成果をあげることでしょう。つまり、チームにはチームの目指す成果や目的があり、メンバーはその実現に向けて取り組むわけです。
チームと言葉では言っていても、チーム自体に目標がなく、一人ひとりが自分の目的・目標に向かって行動しているのであれば、本来のチームとは言えませんし、チーム診断をしても意味がありません。むしろ、個人の診断のほうが重要です。
個人の努力の合計がチームの成果だという面もありますが、それだけではチームとして機能している、チームである意味があるとは言えません。
例えば、お互いにノウハウを提供する、違った視点の意見を交わしアイデアを練る、弱点を補完しあう、お互いにサポートして業務効率を上げる、こうした行動があるとチームが機能していると感じられるでしょう。
つまり、チーム診断の着眼として「チームが機能しているか」を診断するのであれば、
チームが機能するために必要な行動を、メンバーがどれくらい発揮しているか
を診断することがポイントです。
さらには、行動を発揮するためにはモチベーションなどの心理要因も重要です。そこで、主体的な行動を発揮につながるような心理状態になっているかについても診断できればなおよいでしょう。
3.チームパフォーマンスとは何か?
チームが機能するために必要な行動をメンバーがどれくらい発揮しているかをチーム診断の内容にするとよいと述べましたが、各チームの役割や機能によってその行動は違うかもしれません。そこで、必要な行動を洗い出し、コンピテンシーのように整理して、その発揮度合いをアンケートで調査するという方法が考えられます。
ただ、私たち日本経営では様々なチームの分析や学術分野の先行研究を調べた結果、多くのチームで共通する「チームの成果につながるメンバーの主体的行動」を8項目にまとめることができました。私たちはこれを「チームパフォーマンス」と呼んでいます。
チームパフォーマンスというと、そのチームの上げた業績や成果を想像するかもしれませんが、業績や成果は景気や社会情勢、取引先の状況、社内の力学等で様々な影響を受けます。そうした中でもチームは成果を負わなければならないのですが、チーム診断としては、メンバーが持っている力を発揮しきっているかに焦点を絞ることが有用だと考えられます。例えば、外部環境が良好で大して努力をしなかったとしても業績がよかった場合、それでチームパフォーマンスがよいと診断してしまうと、誤った診断結果になりかねません。もしかしたら、その時は外部環境がよかったのだから、もっと成果をあげるべきだったのかもしれません。
こうしたことから、チームの成果につながるメンバーの主体的行動の発揮度合いを「チームパフォーマンス」と呼んでいます。
前述の通り、多くのチームに共通するチーム成果向上につながる8つの主体的行動、つまりチームパフォーマンスですが、それらは以下の8項目です。
顧客貢献行動 | 顧客に対して自分ができる最大限の貢献をしようとする行動 |
最善行動 | 自分の仕事に全力で、最善を尽くす行動 |
プロセス改善行動 | 仕事の進め方、工程等をよりよくするための行動 |
クリエイティブ行動 | 自分の仕事に新たな視点やアイデアを入れようとする行動 |
チーム力活用行動 | メンバーの力を活かしてより良い仕事をするためのコミュニケーション行動 |
チーム運営向上行動 | チームの運営や活動をより良くするための行動 |
メンバー支援行動 | 自分以外のメンバーの仕事がより良くなるために、出し惜しみせずに自ら支援や提案をする行動 |
発信行動 | 自分の意見や考えをチーム内で進んで発信する行動 |
4.チームパフォーマンスを診断する方法
チーム診断としてチームパフォーマンスを診断するのであれば、上記の8つの行動がどれくらい発揮できているか、メンバーに匿名のアンケートを実施するとよいでしょう。チーム全体で集計し、行動の発揮が弱い項目があれば、そこに手を打っていくとよいでしょう。
最初に「リーダーとメンバーが手を打てる内容であること」「メンバーにオープンにできる内容であること」がチーム診断では重要だと述べました。上記の8つの行動は、どれもこの二つを満たしているので、もし行動の発揮が不十分だったとしても犯人探しをするのではなく、どうすれば一人ひとりの行動をもっと発揮できるのかという前向きな話し合いにつなげていくことが重要です。
また、上記の8項目以外に必要だと思われる項目があれば追加してアンケートを設計するのもよいでしょう。ぜひ上記の8項目を軸に考えてみてください。なお、チームパフォーマンスを捉える8つの行動についての簡単なアンケート項目を下の表にまとめておきます。
顧客貢献行動 | 顧客の要望を実現するために、手を尽くしていますか? |
最善行動 | 自分の仕事は、自分で納得できるレベルで取り組んでいますか? |
プロセス改善行動 | 慣れた仕事であっても、仕事の効率や効果を高めようとしていますか? |
クリエイティブ行動 | 自分の仕事に新たな視点やアイデアを取り入れようとしていますか? |
チーム力活用行動 | 自分から進んで他のメンバーに意見やアドバイスを求めていますか? |
チーム運営向上行動 | チームの運営や活動がより良くなるために、進んで行動していますか? |
メンバー支援行動 | 自分から進んでメンバーにアドバイスしたり、情報を提供したりしていますか? |
発信行動 | チームの状況や仕事の流れで違和感や危機感を感じたら、声を上げていますか? |
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5.チームパフォーマンスを向上させるポイント
結局、チーム診断の目的は、チームを向上させることです。診断結果をもとにチームが向上しなければ意味がない。ただ、診断の切り口が様々なので、何を向上させたいのかを踏まえて、チーム診断ツールを選択する必要があります。
ここまでは、チーム診断の目的をチームの成果につながるチームパフォーマンスの向上に置いて解説してきました。そこで8つの行動と簡易な診断方法(アンケート設問)をご紹介しました。
自作のアンケートや弊社のNaviLightを使ってチームを診断し、その結果が出たら、チームでどうすればその行動がより発揮されるかを話し合うことが大事です。その話し合いの際には、以下のことが大事なります。
- 結果がよくなかった場合に、誰かの責任を問わないこと。
- チーム全体の結果はリーダーだけではなく、メンバー全員の責任だと捉えること。
- 「何がダメか」ではなく「どうすればよくなるか」を考えること。
ところで、実は8つのチームパフォーマンスを向上させるにあたって、心理的要因が行動の発揮に影響を与えているということについても、ぜひ知っておいてください。私たち日本経営では、チームパフォーマンス8つの行動に影響を与える心理要因を分析、検証し、9項目に整理しています。
チームパフォーマンスに影響を与える9つの心理要因
心理的安全性 | チーム内で自分の意見や考えを偽りなく伝えられると感じる度合い |
チームへの愛着 | チームやメンバーに対して感じている好意的感情、敬意の度合い。 |
目標共有 | チームの目標とその達成に向けた自分の役割の理解度合い。 |
メンバー信頼 | メンバーに対する能力面・心理面の信頼の深さ。 |
チャレンジ精神 | 自分の身に降りかかることや、チャレンジを通じて経験する困難な状況を肯定的(前向き)に捉える度合い。 |
仕事のやりがい | 担当している仕事の充実感、意義を感じている度合い。 |
プロセス重視 | 仕事のプロセスをチームとして大切にしていると感じる度合い。 |
顧客重視 | 自分たちにとっての顧客は誰で、どのようにその顧客に役立とうとしているのかを意識している度合い。 |
チーム貢献の自信 | メンバーとしてチームの様々な活動の場面(業務改善など)で役立てると感じる自信の度合い。 |
これら9つの心理要因について、肯定的に感じられるほど、8つの主体的行動の発揮が高くなるということが検証できています。また、これらの心理要因は、チームの雰囲気を作ることにもつながり、チーム全体が肯定的な心理状態になれば、メンバーもそれに影響を受けるということが分かっています。
例えば、全体的にチャレンジ精神が高ければ、多少ネガティブなメンバーがいても、徐々にポジティブな傾向が強くなるということです。実際、そのようなことはよくあると思います。
つまり大事なことは、チーム全体として心理要因にある8項目を高めていくということです。チームの状態はリーダーだけでなく、その影響の体の差はあれ、誰もが影響を与えているのだという認識が重要です。
チームパフォーマンス向上に向けて取り組む際には、上記の9つの心理要因もぜひ参考にしてください。
NaviLightなら心理要因の状態も的確に把握
NaviLightなら、チームパフォーマンスに影響を与えている心理要因の状態も的確に把握することができます。また、「リーダーだけの責任にならない」「自ら改善に取り組める」「結果をポジティブに受け止められる」という工夫が随所にあります。チーム診断によってチームの改善・向上に取り組むなら、ぜひNaviLightをお試しください。

株式会社日本経営
取締役 人事コンサルタント 橋本竜也
1999年に入社後、一貫して企業の人事制度構築、組織風土改革に携わる。理論・経験だけでなく、科学的検証に基づいたES調査、チーム診断の必要性を強く認識し、チーム診断ツールNaviLightをリリース。その研究過程や実施データに基づいた知見も踏まえたコンサルティングを提供している。