調査レポート・コラム
<レポート> なぜ、テレワークは成果主義・個人主義を助長させるのか?

『リモートのメリットは、zoom会議の利便性、移動コストの削減、オフィス賃料の見直し、通勤ストレスの軽減など、並べればたくさんあります。
一方で、リモートでは一体感、チームワークは損なわれます。また、リモートではかなり極端に成果主義、個人主義に振らざるを得なくなり、それは当社の根本的なカルチャーと相性が悪いです。それらは数値には出来ないですが、当社にとっては強みが失われかねない由々しき問題です。』

これは、サイバーエージェント社社長の藤田晋さんが5月25日自身のブログで述べていることです。
実はこのテレワークによる「成果主義・個人主義の助長、それに伴うチームワーク悪化」は今、多くの組織で問題になっています。
今回はなぜこのような問題が発生するかを考察すると同時に、その対処法をご紹介します。

テレワークで欠落する
「存在承認」

通常承認は大きく分けて「存在承認」と「成果承認」があります。「存在承認」とはその人の存在自体を認めることであり、挨拶や雑談など何気ないコミュニケーションの中で行われます。一方、「成果承認」とはその人の優秀さ、結果を褒める(または叱る)ことであり、仕事の成果が高い時など、一定の条件において意図的にとるコミュニケーションの中で行われます。
また、存在承認が偏重している組織というのは「ぬるま湯・甘えの組織」になりやすく、仲はいいけど結果はでない。成果承認が偏重している組織は「ぎすぎすした組織」になりやすく、助けを求めにくく出せる成果に限界がある。
だからこそ、どちらかの承認が偏重しないようバランスをとったマネジメントをすることが重要とされてきました。
しかし、テレワーク環境の最たる特徴は、お互いが空間をともにしないということであり、成果(結果)までの過程が見えなくなることです。
この結果、これまで意識せずとも職場にいくだけで実施されていた存在承認が欠落し、いつの間にか成果承認偏重型の組織がつくられることで、成果主義・個人主義が助長される組織が続出しているのではないかと考えます。

仕事ができない人は
昔からできてない

最近、テレワークを導入したチームから「仕事ができない人への他のメンバーからの突き上げがひどくなっている」という声をよく聞きます。これも、その人が「テレワークになったから、仕事ができなくなったのか」というと、そうではないでしょう。ただ、存在承認とのバランスがとれた中においては、仕事ができなくても「〇〇さん、全然仕事できないけど、まあ悪い人ではないんだよね」とある程度許容される組織風土が、テレワークになり成果承認が偏重することで、許容できなくなっているということなのだと思います。

テレワークで孤立するのは
「普通の人」

この成果承認の偏重を組織の2-6-2の法則からさらに考えてみると、テレワークのデメリットとしてよく挙げられる「孤立してしまうメンバーの出現」について、一つの考察ができます。「組織の2-6-2の法則」というのは、どのような組織でも、2割の人間が優秀な働きをし、6割の人間が普通の働きをし、2割の人間がよくない働きをするという法則で社会を構成する生き物にみられる現象ともいわれています。
さて、成果承認が偏重していくと、まずリーダーが物理的・精神的に労力を使うのは、下位2割のよくない働き(つまり仕事ができない)メンバーです。一見、孤立しそうなのはこの下位2割のように思えますが、成果承認の中では、彼らが成果を出せないことは、リーダーはよく理解しているので、管理を強化させるなど、むしろコミュニケーションは増えているのではないでしょうか。
次に上位2割がその状態に不満を持ち始めます。「自分はちゃんとやっているのに」とリーダーや下位2割に対して厳しく追及していく。そして最後に残るのが「普通」の6割です。この6割は成果承認の中においては、可もなく不可もないメンバーなので、特にコミュニケーションをとる必要もなく、声をかける機会がなくなりやすい。結果、気づいたら不安定なまま、孤立化し、生産性が低いまま気づかれず放置されるということが起きるのではないかと思います。

個人面談の限界

こういったことを述べると、では、「普通」の6割が孤立化しないためにも、一人ひとりと面談をした方がいいのではないかと考えるかもしれませんが、そんなことをしている時間も体力も多くのリーダーにはないでしょう。また、面談をしたからといって、チーム全体のパフォーマンスが上がるかといえばそうではないのが現実です。むしろリーダーは自分が頑張るのではなく、メンバー同士での相談やアドバイスが機能していく体制を目指していく必要があり、そのために必要なのはチーム全体での対話をどのように実現していくかです。

今、リーダーに求められるもの

テレワークは、これまで、その実施に否定的だった業界においても確実に広がりをみせています。
今後、平常時もテレワークを継続するか、部分的な導入とするのかは、対応がわかれるでしょう。
ただし、新薬・ワクチン等が開発され、例えば新型コロナウイルスがインフルエンザと同じような扱いになるまでは、全ての組織が強制テレワーク状態にいつなってもおかしくない状態が続きます。
また、3密を避ける環境は継続して求められるため、いずれにせよ、メンバーが集まった状態での会議等は実施しづらく、成果承認に偏重しやすいムードというのは続くでしょう。
そのような時リーダーに必要なのは、チーム全体を俯瞰し、パフォーマンス向上に向けたチーム対話を創り上げる力です。いま、リーダーは、これまでとは違った環境の中で、いち早くその環境に適用し、新たなマネジメント力を獲得していくことが求められているのではないでしょうか。


上矢印